そうだろうねえ」と四本も相づちをうち「なにしろ水鉛鉛鉱というものは、世界においてもめずらしい鉱石なんだから。……それからもっと謎を解けないかしら」
「そのヤリウスが、うまい商売を捨てて、なぜどこかへ行ってしまったんだろう」
「そのことなんだ。ぼくの想像では、ヤリウスは、水鉛鉛鉱がかなりたくさん出る場所を知っていたんだと思う。その証拠には、この部屋だけにでも、あっちにもこっちにも、たくさん標本や見本の鉱石が、無造作においてあるからね。ほら、そこの隅には、樽にいっぱいはいっている」
 なるほど、小さい酒樽《さかだる》であったが、その中にいっぱいはいっていた。
 少年たちが、感心して樽の中をのぞきこんでいるとき、大時計の音が、ゆっくり、かちかち聞えてきた。
 ところが、あと五分足らずで、この屋敷は大爆発を起すことになっていた。四少年の中には、それに気がついている者は一人もない。あと、たった五分だ。
 大危険は迫っている。
 それなのに、その大危険の時刻を知っている八木少年はどうしたのであろう。

   牡牛の扉

 八木少年は、ふと吾《わ》れにかえった。
 彼は、小暗い階段の下に倒れていた。
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