し、耳をすました。水は、だんだんふえて来る様子だ。すこしはなれたところで、どうどうと音がしている。それから水がわいて来るものらしい。
「このままでは、溺《おぼ》れてしまう、なんとかして、水の出るのをとめることはできないかしらん」
 八木君は、この期《ご》におよんでも、あわてることなく、冷静を保《たも》っていた。
 ざぶざぶと水をわたって、八木君は、水のわいてくると思われるところへいってみた。
 あいにく、まっくらで分らない。
 彼が持っていた懐中電灯は、いつの間にか水づかりとなって、ボタンをおしてもあかりがつかなかった。
 そのくらやみの中で、八木君は足でさぐりながら、出水口の様子をしらべた。
「うむ、すごいいきおいで、水が下からわいてくる。これはきっと、上にタンクがあって、タンクの水がながれこんでくるんだな」
 あとで分ったことであるが、これはタンクにたまった水と同じような種類であるが、じつはそれとはくらべものにならないほど多量の水をたくわえているところから、こっちへ流れこんで来たのである。それは泉水《せんすい》の大きな池であった。
 そうでもあろう、水のいきおいはもうれつであった。
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