が二つおどっているのを見て、びっくりした。そこまでの話は、前にしておいた。
八木君は、肝玉《きもたま》のすわっている方であった。けれども、青白い鬼火がふわふわと宙におどっているのをこんな場所でしかも心細いひとりぽっちで見物したんでは、あまりいい気持ではない。
「あああァ……」
と、八木君は声をあげて、地下道をまた奥の方へ逃げこんだ。
そこで彼は小さくなって、土の壁にもたれてかがんでいた。恐ろしさに気がつかれ、その上に、ここへはいってからの活動のつかれも一時に出て来て、八木君はいつとも知らず睡りこんでしまった。
それからどのくらい時間がたったか、八木君は知らなかった。
夢の中に、カーン、カーン、と天主教会《てんしゅきょうかい》の鐘がなるひびきを聞いた。大司教《だいしきょう》さまが、盛装《せいそう》をしてしずしずとあらわれた。と、下から清水がこんこんわき出して……。
「あッ、水が出てきた」
八木君は目をさました。
気がついてみると、あたりは水だらけになっている。お尻《しり》も足も、水づかりだ。
なぜ急に、こんなに水が出てきたのか。
八木君は、立ち上った。そして足もとに注意
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