こたわっているという例のものすごい光景を見るのではないかと思っていた。
ところが、その予想ははずれた。
少年たちが見たものは、古ぼけた洋風の実験室らしいものだった。
いくつかの台があり、その上にいろいろの形をしたレトルトやビーカーや蛇管《じゃかん》が、それぞれの架台の上にのっている。たくさんの壜《びん》がある。
古い型の摩擦電気《まさつでんき》を起す発電機らしいものもある。炉《ろ》らしいものもある。ふいごが三つもころがっている。
棚《たな》には、本や薬品の壜らしいものも並んでいる。椅子が一つ横たおしになっている。他の腰掛《こしかけ》は、ちゃんとしている。
壁に、額縁《がくぶち》が一つ、ひんまがって掛っているが、その中には、かんじんの絵がはいっていなかった。いや、はいっていないわけではない。そこにはいっていた油絵らしいものが、切りとってあった。それは肖像画《しょうぞうが》らしかった。
八木君目ざめる
話は、八木のことにもどる。
八木君は、空井戸《からいど》の中にひとりぽっちとなり、心細くなっていた。空井戸の底から上を見上げたとき、井戸の上あたりで、鬼火《おにび》
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