あ、そうだ」
二宮の足は重いらしく、四本のすぐ前で立ち停《どま》りそうな足どりである。
「上まで来たよ、何にも出てこないや」
五井の声が、上の方で安心したような響きをつたえる。
「えッ、何にも出てこないか、ふーん」
二宮はほっとして、階段に腰を下ろしてしまった。すると四本がそばへよって来た。
「おい二宮君、このいきおいで、早く上まであがってしまおうよ。のぼりたまえ」
「え。いいじゃないか、上には何にもないと、五井君がいっているもの」
「じゃあ、君はここにいたまえ、ぼくは上までのぼる、ロープはといてしまうからね」
「う、待った。ロープをといちゃいけないよ、ぼくも上へのぼる」
四人はついに上までのぼった。
そこは、時計の機械のまうえになっていて、二メートル平方ほどの板の間になっている。上を見上げると、煙突《えんとつ》の内側のようになって、まだ五六メートルの空間が少年たちの頭上にあった。電灯をその方へさしつけてみたが、天井のあることと、そのまん中あたりに、鎧《よろい》でもぶら下げるためにつけてあるのか、大きな鈎《かぎ》が一つ見える。その他ははっきり見えない。
「あそこまでのぼってみ
前へ
次へ
全79ページ中38ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
海野 十三 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング