、普通は、扉で仕切られるようになった部屋の集りで、その部屋の外には、通路として廊下《ろうか》がついている。ところが、この時計屋敷の間取りをみると、そういう扉式の仕切がすくない。原則としてカーテンで仕切ってある。カーテンをひらけば、どの部屋も廊下も、みんな一つのものになってしまう。これはヨーロッパでも、暑い方の国が採用している古風な建築法だよ」
 四本は、おもしろいことをいい出した。
「するとヤリウスという人は、ヨーロッパの暑い方の国の人の血をひいているのかい」
 二宮が、感心《かんしん》のていで、口を出す。
「そうだ、多分ポルトガル人かイスパニア人の血を受けているのかも知れない」と四本はまじめな顔つきをした。
「ところが、あそこなんか、襖《ふすま》がついている。奥には障子《しょうじ》のはいっているところもある。これはきっと、この屋敷を左東左平が買ったあとで、手入れしたものらしいね」
「なるほど、イスパニア式では、日本人は住みにくくてしかたがなかったんだろう」
 五井が、うなずいて、いった。
「だから、これからの探険では、今いったことを頭において、よく注意をはらっていくのがいいと思うね。
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