ついてみると、あたりは今までのような半くらがりではなく、昼間の光がどこからか、さしこんでいた。そして、そこは板の間だったではないか。
 少年たちは、次々に起きあがった、腕をさすっているのは二宮、腰をおさえて、顔をしかめているのは六条、頭をしきりに振っているのは四本、平気な顔は五井だった。
「これはどうしても、時計屋敷の中だね、表からはいらないで、へんなはいり方をしたものだ」
 五井が、いった。
 そのとおりだった。妙《みょう》なところから、地下を経《へ》て送りこまれたのだ。これも時計屋敷の最初の主人公ヤリウスの秘密の設計なのであろうか。
 あとから考えると、四少年が、こんな裏口の道から時計屋敷の中へはいりこんだことは、むしろ幸運であった。というのは、この時計屋敷の正面からはいりこむことは、たいへん困難なことであった上に、危険がいくつも待っていたのだ。
 裏口の道にも危険な仕掛《しかけ》が用意されてあった。しかし今ではそれがもう役にたたない。仕掛が故障となっているためだった。だから四少年はまず無事のうちに、屋敷内に送り込まれたのである。もっとも、少年たちはそういう事情について全く気がつい
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