であった。わわわンわわわンとトンネルへひびいた。
「なんだろう」
八木は猛獣がこのトンネルへどこからかはいりこんだのではないかと思った。それならたいへんである。彼はもと来た方へどんどん駆けだした。
やっと、から井戸の下までもどりついた。上から綱がたれている。八木はその綱をにぎると、左右へはげしくゆりうごかした。
上では、これを危険信号とさとって、すぐさま八木を綱ごと上へ引張りあげてくれるはずの約束だった。
ところが、綱はしずかに左右にゆれているだけで、引張りあげられるようすはなかった。
「どうしたんだろう」
八木の心臓はとまりそうになった。
見上げると、から井戸の上はぼうと明るい。友人たちが、そこからのぞいていれば、その顔が見えなければならないのであった。ところが、誰の顔も見えない。
八木は不安になって、下から上へ声をかけた。声はわわわンと上へ伝わっていったが、仲間の顔はいつまでたっても出ない。
「へんだなあ。上じゃ、どうかしたんだろうか。どこへいったんだろうか」
八木は、この上は一刻もこんなところに待っていられないと思った。なにがなんでも、この深さ十五メートルの綱をよ
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