た。
「おや」
と、八木は上へ仰向《あおむ》いた、光は天井からさしていたので、それがどうして暗くなったのかと上を見たのだ。
「おお、あれは何だ……」
八木少年の頭上五メートルばかりのところに、あついガラスをはめこんだ細長い天井があった。そのガラス天井は、よごれてくもっていたが、そのガラス天井の上を、黒い楕円形《だえんけい》のものがゆっくりと動いているのであった。
「ふしぎなものを見つけた……」
おそろしいことはおそろしいが、すばらしい発見だ。
なおもよく見ていると、その黒い楕円は二つあって、一方が動いているときは、他方はじっとしている。そしてたがいちがいに動く、その二つの楕円全体が、もっと大きい円形のかげで包まれている。
「あッ、そうか。ガラス天上の上を、人間がそっと歩いているんだ」
八木は、その謎《なぞ》をといた。
「しかし、あれはいったい誰だろうか」
ガラス天井を破って、上へあがって、あれが何者であるか、顔を見たいと思ったが、天井を破ることはできない。どうしたものかと考えこんでいるとき、どこからか、異様《いよう》なうなり声を聞いた。それは猛獣が遠くで吠《ほ》えているよう
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