じのぼって、から井戸の上へ出なくてはならないと思った。しかし十五メートルも高いところをうまくのぼれるかしらん。
 八木は綱を見つめた。
「えいッ」
 彼は綱にとびついた。
 と彼はどすんと尻餅《しりもち》をついた。いやというほど椎骨《ついこつ》をうった。それと共に大きな音がして、上から綱がどしゃどしゃと落ちて来て、彼の上にのしかかった。
 せっかくの頼みに思う綱が、どうしたわけか、上の方ではずれて、落ちて来たのだ。さあたいへん。もうここから井戸を出ることができなくなった。彼は困りきって、うらめしそうに井戸を見上げた。そのときであった。井戸の上に、うす青い鬼火が二つ、何に狂うか、からみ合いつつおどっていた。八木少年は「うん」と呻《うな》って、気絶《きぜつ》した。

   怪音

 井戸の外で、八木少年を待っていた四人の少年探偵は、いったいどうしたのであろうか。それを語るには、すこし以前にかえらなくてはならない。
「どうしたんだろう、八木君は、おそいじゃないか」
「もう引返《ひきかえ》してこなければならないのに、へんだねえ。呼んでみようか」
「うん、呼んでみよう」
 そこで六条、五井、四本
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