この八木が語ったから井戸の話は、他の少年たちをおどろかせた。
「へえーッ、なんだろうね、そのから井戸は……。あやしい井戸だ。調べてみようじゃないか」
「その井戸の中へ下りて行けるのじゃないかしら、きっと抜け道かなんかあるんだよ」
「じゃあ、これからみんなで行って、調べてみよう」
 そこで相談がきまり、五人の少年探偵は、雑草を踏みわけて、問題の洞穴へはいっていった。

   から井戸の中

 穴の中は、どこからともなく光線が流れこんで来て、うすぐらいが、ものの見わけはついた。
「ここにあるんだ、から井戸は……」
 八木が立止って指した。なるほどそこはすこし壁がひっこんでいて、から井戸らしいものがあった。少年たちは、おそるおそる中をのぞいたり、聞き耳をたてたりした。
「中はまっくらで、何も見えない」
「何の音もしてないね。地獄の穴みたいだ」
「いや、地獄なら鬼や亡者《もうじゃ》がわいわいさわいでいるから、にぎやかなんだろ」
「そうじゃないよ、地獄といっても、いろいろ種類があるなかに、無限地獄《むげんじこく》というのは、底がない、つまりずっと深いのだ。そして一度落ちると出てこられない。あたり
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