がまがってついている。その道のとおり歩いていると、ぽっかりと塀の外へ出たんだ」
「へえーッ、塀の外へね」
「そうなのさ、だからもう一度、塀をよじのぼって、こっちへ下りて来たんだ」
「なあんだ、そんなことかい、ちょっともふしぎでも怪事件《かいじけん》でもないや」
「ぼくたちは、時計屋敷がおそろしいところだと思いこんでいたので、こわいこわいが、今みたいに、二人の八木君を考えることになったんだよ」
「そんな風に、ぼくたちの頭がへんになるということは、もう時計屋敷の怪魔《かいま》のためにぼくたちがとりこになっていたしょうこだよ、いやだね」
「そうじゃないよ、ぼくらの神経がちょっとへんになっただけのことさ、こんな塀なんか普通のくずれた古塀だよ」
「いや、へんなことがあるのさ」
と八木は顔をかたくしていった。
「あの洞穴の中にはいっていくとね、井戸みたいな穴があるんだよ。垂直に掘ってある穴だ、井戸かと思って、ぼくは中へ石を落としてみた。ところが、ぽちゃんともどぶんとも音がしない。だから井戸ではなくて、水のないから井戸だと分ったが、どうしてあんなところにから井戸が掘ってあるのか、ふしぎだねえ」
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