う、先へおりた音ちゃんが見えないじゃないか」
「あれッ、へんだね、もう八木君は、時計屋敷の幽霊につかまっちゃったのかな」
「いやだねえ」
八木音松の姿は見えない。彼がひとりで先に塀をおりたあとで、いったいどんなことが起ったのであろうか。
二人の八木君
「困ったねえ、八木君がいないと、あとの探偵はできやしない」
「そんなことよりも、早く八木君を助けてやろうよ、きっと時計屋敷の幽霊につかまったんだよ、早く助けないと、八木君は殺されてしまう」
「困ったね、しかしへんだね、ぼくたちより、たった一足先へとびおりたのに、もう姿がみえないんだからね」
四人の少年は、塀の内側にからだをよせて、心配している。
「おうい」
とつぜん頭の上で呼ぶ者があった。
「あっ!」
四人が、声のした高塀《たかべい》の上へ目をあげると、なんというふしぎ、塀をのり越えて八木音松が下りて来た。
さっき、まっ先にこの塀をのり越えた八木だった。姿が見えなくなる。と、またもや八木が、塀をのり越えて下りて来た。さっきの八木と、今下りて来た八木と、八木が二人居る。いったいどっちの八木が、ほんとうの八木であろうか。ほ
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