そういう私の気持が、すぐヤナツに通じたと見え、彼は私に、進化論を提《ひっさ》げて議論を吹きかけて来た。その議論は一種奇妙なものであったが、私はだんだん言い負かされて、旗色が悪くなった。そしてヤナツが主張するように類人猿から猿人、猿人から人類、その次に人類から高等人類すなわちヤナツなどの微小人間の擡頭《たいとう》することを認めないわけにはいかなくなった。ヤナツは、灰色の丸い顔を輝かして、満足そうに笑った。
「われわれの同族が、この先に集っているから、君をそこへ案内したい。来ませんか」
と、ヤナツは誘った。
私はそれに従った。恐ろしくもあるが、そういう次の時代を待機している連中の様子をぜひ見たい気もあった。
ヤナツについていってみると、なるほど微小人間が四五百人も集っている洞穴《どうけつ》があった。彼等は私を見懸《みか》けて別にさわぐでもなかった。むしろ憐憫《れんびん》の目を向けているような感じがして、私は一層|萎縮《いしゅく》した。
ヤナツの妻君にも紹介された。やはり灰色の丸い顔をしていて、髪を背中へ長く垂らし、なかなか耳目《じもく》もととのっていた。そして私に御馳走をするのだと
前へ
次へ
全5ページ中3ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
海野 十三 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング