最小人間の怪
――人類のあとを継ぐもの――
海野十三
−−
【テキスト中に現れる記号について】
《》:ルビ
(例)この秘話《ひわ》をしてくれたN博士
|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)私は一層|萎縮《いしゅく》した。
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この秘話《ひわ》をしてくれたN博士も、先々月この世を去った。今は、博士の許可を得ることなしに、ちょっぴり書き綴《つづ》るわけだが、N博士の霊魂なるものがあらば、にがい顔をするかもしれない。
以下は、N博士の物語るところだ。
私は大正十五年十二月二十六日の昼間、霧島の山中において、前代未聞の妖怪に出会った。
当時私は、冬山における動物の生態研究をつづけていたのだ。
私はキャンプを張り、幾週間も山中で起き伏《ふ》していた。あたりはかなり深い山懐で、木樵《きこり》も見かけず、猟師にさえ会わなかった。私ひとりでこの深山《しんざん》を占有しているような気持がし、私の心は暢々《ちょうちょう》としていた。
或る朝、起きてキャンプを出てみると、外は真白になっていた。降雪《こうせつ》が夜のうちにあったのだ。そしてその日、妖怪に出会ったのである。
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