入っても、調べを続けることにした。しかしそれは最早《もはや》八月八日分の日記ではなくなるから、ここで擱筆《かくひつ》する。
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それからまた十年たった。五十×年八月八日となった。この日の日記は、従来の慣例を破って、遂に金博士の許《もと》へ届けられなかった。そのわけは、政府が突然、全国的に、通信杜絶《つうしんとぜつ》を号令したからである。
その理由は?
その理由は、そのときには何のことだか、全く分らなかったが、それから一年半ほどたって、漸《ようや》くぼんやりしたその輪郭《りんかく》だけがわかった。それは白人帝国《はくじんていこく》が、ひそかに抱合兵団《サンドイッチへいだん》をもって、わが国攻略を狙っているという情報が入ったため非常警戒となり、遂に通信|厳禁《げんきん》となった由《よし》である。
しからば、その抱合《サンドイッチ》兵団とは、どんなものであるか。それが分っていれば、政府もそれほど狼狽《ろうばい》する必要はなかったのである。分らなかったから、騒ぎが大きくなったのであった。その抱合《サンドイッチ》兵団のことは、次の日記において、初めて全貌《ぜんぼう》が明
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