のことを、よく覚《おぼ》えていない。
5
それからまた十年たった。
第五回目の日記である。
[#ここから2字下げ]
四十×年八月八日
[#ここで字下げ終わり]
目が覚めると、今日は何をして退屈を凌《しの》ごうかなと、それがまず気にかかる。
極楽生活は、飲食にも困らないし、着るものも充分だし、外敵《がいてき》の侵入の心配もなし、すべて充分だらけであるが、只一つ困ったことには、来る日来る日の退屈をどうして凌ぐか、これに悩まされる。
ところが今朝は如何なる吉日《きちじつ》か、私は不図《ふと》四十年前に、金博士から聞いた疑問の民族の名を思い出したのであった。
ピポスコラ族!
ピポスコラ族とは、どんな民族なのであろうか。あのときは空襲下に戦《おのの》いていたときであったから、それがどんな族だか調べてみる余裕がなかった。よろしい、今日はあれを一つ古代図書館へいって調べてみよう。私は、俄《にわ》かに元気づいた。
古代図書館に於て、完全に深夜まで暮した。しかしピポスコラ族が何ものであるかは、遂に手懸《てがか》りがなかった。私は更にそのまま、次の日暦《にちれき》の領域に
前へ
次へ
全26ページ中18ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
海野 十三 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング