今昔ばなし抱合兵団
――金博士シリーズ・4――
海野十三

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【テキスト中に現れる記号について】

《》:ルビ
(例)金博士《きんはかせ》

|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)一体|貴公《きこう》の

[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(例)[#ここから2字下げ]
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 なにがさて、例の金博士《きんはかせ》の存在は、現代に於ける最大奇蹟だ。
 博士に頼みこむと、どんなむつかしそうに見える科学でも技術でも、解決しないものは一つもない。雲を呼んでくれと博士にいえば、博士はそこに並んでいる壜《びん》の栓《せん》を片端《かたはし》から抜く。抜けば、壜の中よりは、濛々《もうもう》たる怪しき白い霧、赤い霧、青い霧、そのほかいろいろが、竜巻《たつまき》のような形であらわれ、ゆらゆらと揺《ゆ》れているのを面白がっている間に、いつしか部屋の中は一面の霧の海と化《か》してしまって、そのうちに博士がどこにいるやら、実験台がどこにあるやら、はては自分の蟇口《がまぐち》がどこにあるやら、皆目《かいもく》分らなくなってしまうというようなわけで、結局金博
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