先《ま》ず第一に、敵国の空軍は本年に入って、殆んど新しい飛行機の補充をなさなくなったことを諸君の前に報告するの光栄を有《ゆう》するものである。いや、新機を補充しなくなったばかりか、これまで敵国が保有していた軍用機も、最近一年は、壊《こわ》れ放題にしてある始末《しまつ》である。これ乃《すなわ》ち、わが国が、完全なる防空力を有する地殻《ちかく》及び防空硬天井《ぼうくうこうてんじょう》の下に、かくの如く地下千メートルの地層に堅固《けんご》なる地下街を建設したことによって、敵国は空中よりの爆弾が一向《いっこう》効目《ききめ》がなくなったことを確認し、そして遂に、その軍用機整備の縮小を決行するに至った次第《しだい》であります。つまり、われわれが完全に地下に潜《もぐ》ることによって敵の空軍を全然無力化させることに成功したわけであって、これにより、われわれの国家は、いよいよ安全にして健康なる発展を遂《と》げることが約束されたわけである。先ず盃《さかずき》をあげて、今日の大勝利を祝って、乾盃したいと思います。皆さん、盃を……」
私は、久振《ひさしぶ》りに、飲み慣れない酒に酔ってしまって、それから以後
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