ごくらく》地下街建設の満三ヶ年の記念日であるので、ラジオは朝から、じゃんじゃんと楽しい音楽を送ってくる。
あれからもう三年たったか。
われわれ人類も、空爆の威力《いりょく》に圧《お》されて、だんだんと地底深く追いやられたが、初めはせいぜい地下二百五十メートルが人類の生活し得る限度で、それ以上になると、とても暑くて、生活は出来ないし、構築物《こうちくぶつ》ももたないといわれたものであるが、そうかといって、地下四五百メートルにまで達する深度爆弾《しんどばくだん》の餌食《えじき》になるのを待っていられないため、必死の耐熱建築の研究に国立研究所を動員し、遂《つい》に不可能と思われたる難問題を解決し、三年前にこの輝《かがや》かしき極楽地下街の完成を見たわけである。
私は、食事を済ますと、すぐさま圧搾空気軌道《あっさくくうききどう》の管《くだ》の中に入り、三分四十五秒ののちには、記念祝賀会場たるネオ極楽広場の人混《ひとご》みの中に立っていた。
梁首席《りょうしゅせき》の巨躯《きょく》が、壇上《だんじょう》に現れた。
われわれは一せいに手をあげた。
「本日の記念日に際し、余《よ》は何よりも
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