寄せたりするわけにいかんじゃないか」
「それもそうだな。じゃあ、仕方がない。ここから君たちの冥福《めいふく》を祈っているよ。南無阿弥陀仏《なむあみだぶつ》!」
「おい、そんな薄情《はくじょう》なことをいうな。おーい、何とか助けてくれ。あ、電話を切っちゃいかん。……」
といっているとき、大音響《だいおんきょう》と大閃光《だいせんこう》とに着飾って好《この》ましからぬ客がわれわれの頭の上からとび込んできたのであった。それ以来、私は人事不省《じんじふせい》となり、全身ところきらわず火傷《やけど》を負ったまま、翌朝《よくちょう》まで昏々《こんこん》と死生《しせい》の間を彷徨《ほうこう》していたのである。
4
それからまた十年たった。
今日は八月八日である。金博士へ対して、約束のとおり、第四回目の日記を送ることになった。次に示すのは、その日記のうつしである。
[#ここから2字下げ、折り返して3字下げ]
三十×年八月八日 室内温度、湿度、照明度すべて異状なし 配給も正確なり
[#ここで字下げ終わり]
本日は、地下千メートルを征服し、現在われわれの棲《す》んでいるこの極楽《
前へ
次へ
全26ページ中15ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
海野 十三 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング