くせい》腸《ちょう》チブスでみな死ぬし、第三番目には先月、鉄道省の技術官連が大島旅行をしたときに、汽船爆沈で大半《たいはん》溺死《できし》しましたし、これで四度目です。私はいよいよこれは唯事《ただごと》ではないと思うのですが……」
「唯事ではない――とは」博士が例の調子で呻《うめ》くように言った。
「偶然の出来ごとでは無いというのかね」
「確かに、これは何か陰謀が行われているのに違いないと思うのです。一つ先生のお名前で学界に警告をなさってはどうですか。でないと、この調子で行けば、遠からず、我国の科学者は全滅するかも知れません」
「全滅、ウフ、それも悪くはないだろうが、一応警告を出すことにしようか。それにしてもこれが陰謀だとすると、どんな方面からのものだと考えているかね、君は」
「私は、こう思っています」と松ヶ谷学士は瞳を輝かして言った。「どうやら、これは変態的な性格を持った化学者の悪戯《いたずら》だろうと思うのですが。それは鉄道省の場合の外《ほか》は、爆弾、バクテリア、それから毒瓦斯という風に、いずれも化学者に縁《えん》のあるものばかりが、殺人手段に使われていることです。それから犯人は
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