をなだめている人も、嫌《いや》な顔付にかわった。
「シ、しまった!」叫んだのは椋島技師である。反射鏡から飛びのくと、傍《そば》の電話器をつかんで、自棄《やけ》に信号をした。
「キミちゃん。早く信号しろ!」
 そう言ったかと思うと、椋島技師は、気が変になったようになってコック部屋を飛び出した。
 おキミは、素早《すばや》く側の窓を開くと、窓の下に腰をかがめ、右手を水車《みずぐるま》のように廻すと、何か黒いものをパッと窓外になげた。なにか街路の上で爆発するらしい音がして、スーウと青い光が閃《ひらめ》いた。パンパンと音がして、ヒューッと銃丸《じゅうがん》が窓外《そうがい》から、おキミの頭をかすめて衝立にピチピチと当った。そのとき遅《おそ》し、例の会合のある室の大きな硝子《ガラス》窓が、バシーン、ガラガラというすさまじい音響をたてて壊《こわ》れ始めた。何だか真黒な大きいものが、あとからあとへと硝子窓に飛んできては、硝子という硝子を悉《ことごと》く壊《こわ》してしまった。例の室内は硝子の破片がバラバラと雨のように降った。硝子の雨を浴びた一座のものは奇声をあげているばかりで、逃げ出そうとする気配《
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