》をお委《まか》せになっても、若し私自身が、その結社の一員だったら、閣下は一体どうなさる御考えですか」
「どうも貴方は中々いたいところを御つきになりますね。しかし御安心下さい。その御念には及びません。いくらでも善処すべきみちが作ってありますから」
この場面があって、椋島技師は、国際殺人団の探索《たんさく》に当るために、剣山陸軍大臣直属のスパイを任命された。彼はそのために、如何なる場合もこの目的のために一命を抛《なげ》うって努力すること、このスパイたることは、絶対に他人に洩《も》[#底本のルビは「もら」と誤記、175−上段−4]らしてはならぬのみか、同志であるものを発見したときと雖《いえど》も、その事情を明かし合ってはならぬこと、但《ただ》しスパイをつとめるについて、事情をあかすことがないのであれば、助手を使ってもさしつかえないことなどと、厳しい注意をこまごまとうけたのであった。
「誓って、祖国のために!」椋島技師は、燃えるような眼眸《がんぼう》を大臣の方に向けて立ちあがると、こう叫んで、右手をつとのばした。
「天祐《てんゆう》を祈りますよ、椋島さん」大臣の幅の広いガッシリした掌《て》
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