にはっきりあうと、道をあるいていく人々の姿が見えるようになった。ただし、斜《なな》め上から見たところがうつっている。ちょうど、ビルの三階ぐらいから地上を見下ろしたような調子であった。
「アトランチス人だ。りっぱな服装をしているだろう。エジプト時代よりもずっと文化が高かったことが分る。男と女の区別も、ちゃんと分るだろう」
 おじさんの説明に、三四郎はかたずをのんで画面に見入っていた。美しくかざって白馬が通る。
「ほら、道で立ち話をしている。二人の男の話が唇のうごきで分る。よく耳をすましていたまえ」
 おじさんが注意した。と、なるほど、かすかではあるが会話が聞える。
“なげかわしいことだ。こんなに道義がすたれては、生きて[#「生きて」は底本では「生きで」]いるのがいやになった”
“あくことをしらないこの頃の人間の欲望。神をおそれない人々。いくら美しく飾りたてようと、これは人間の世界ではない。禽獣《きんじゅう》の世界だ”
“今に、天のおさばきがあろう。いや、すでにそのきざしが見える。君は気がついているか”
“うん。君は弟月《おとうとづき》のことをいっているのだろう。弟月が、だんだんあやしい光
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