。何が見えるか。」
「大西洋だ」
「そうだ、大西洋だ。だが、これからよく気をつけて見ていたまえ」
「おやおや、へんだぞ。大西洋の中に大陸がある。これは一体どうしたんでしょう」
 三四郎は、大西洋のまん中に、相当大きな大陸のあるのを見て、ふしぎがった。
「あれはアトランチス大陸だ。当時、世界の文化はアトランチス大陸に集っていたのだ。世界の中心だったんだ。エジプトの文化も、ユーラシア大陸の文化も、まだ誕生前だったんだ」
「でも、今大西洋には、そんな大陸はないじゃありませんか。どうしたんですか」
「さあ、それが大事件なんだ。まあ、しばらく見ていたまえ。器械を調整して、アトランチス大陸の地上へ焦点をあわせてみよう」
 おじさんは、器械の前で、いそがしく調整をはじめた。たくさんある目盛盤をいくどもうごかし、そして計器の針をみては、また目盛盤をうごかすのであった。その間に、映写幕にうつっている像はいくたびかぼんやりとなり、またいくたびか川のように流れ、それからまた、たびたび消えた。
 だが、そのうち像は次第にはっきりして来た。山が見え、川が見え、それからりっぱな建築物が見えだした。やがて焦点が地上
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