「それはそうだろう。月がなくなるなんて、たいへんな事件だ。それがために、当時地球に住んでいた人類は、どんな目にあったか。どんな苦しみにあったか。見ていたまえ、今にそれが見えるから……」
「お月様は今すぐこわれるんですか」
「まだ、ちょっと間がある。――この器械は途中をどんどんとばして行くが、今うつっているときからかぞえて、約百年のうちに、月の一つがこわれる」
「百年間も、この器械の前に待っているのですか」
「いや、この器械では、あと十五分ぐらいで百年後の光景がうつり出すことになっている。今おじさんは、地表《ちひょう》の光景をもっとはっきり出そうとして一生けんめいやっているのだよ。ほらほら大陸の海岸線ははっきりしてきたろう。白く光っているのが海、くらいのが陸地だ。このへんは、地球上のどこだか分るだろう」
 おじさんは、えんぴつを手にもって、画面をさした。
「ああ、分りました。ヨーロッパですね。このへんがスペインにポルトガル。おやおや、ヨーロッパ大陸と南のアフリカ大陸とがつながっていますね」
「まあ、そうだ。さあ、これから画面の方を[#「画面の方を」は底本では「画面の方へ」]移動して行くよ
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