いるのだ。なんというおどろき、なんというふしぎ!
 その場面の多くは、上から下を見た光景であった。おじさんは、ときどき器械のスイッチを切りかえて、ななめ上から見た光景も見せてくれたが、これはすこしだけであった。ま横から見たところや、正面から見たところは、ほとんど出てこなかった。それは横へ出る光は、他の部分から出る光にじゃまをされて、純粋な形では出にくい。だから見えにくいのだということだった。
「なんでしょうね、山脈のむこうに二つ光っているものがありますね」
 三四郎は、おじさんにたずねた。
「あれは月だよ」
 器械の目盛をあわせていたおじさんは、かんたんに答えた。
「うそをいってらあ。月なら、ぼくだってわかりますよ。月が二つもあるわけがないじゃありませんか」
「ところが、それがあるんだよ。この光景にうそはない。一万年前には、地球のまわりを月が二つ、まわっていたんだね」
「ふーン。おどろいたなあ」
「二つの月のうち、その一つは、なくなった。見ていたまえ、やがてそれが見えるはずだ、一方の月がこわれて見えなくなるところがねえ」
「そんな光景が見えるんですか。ぼく、背中がぞくぞく寒くなった」

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