洪水大陸を呑む
海野十三

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【テキスト中に現れる記号について】

《》:ルビ
(例)大人《おとな》

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(例)画面の方を[#「画面の方を」は底本では「画面の方へ」]移動して
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   ふしぎな器械

「ぼく、生きているのがいやになった」
 三四郎が、おじさんのところへ来て、こんなことをいいだした。
「生きているのがいやになったって。これはおどろいたね。子供のくせに、今からそんなことをいうようじゃ心ぼそいね。なぜそう思うんだい」
 しらが頭に、度のつよい近眼鏡をかけた学者のおじさんは、本から目をはなして、たずねた。
「だって、ちっともおもしろいことがないんだもの」
「ふん、なるほど」
「おなかはいつもすいているしね、ほしいものは店にならんでいるけれど、高くて買えやしないしね」
「ああ、そうか、そうか」
「その品物だって、とびつくほどほしいものもないし、それから大人《おとな》の人は、みんな困った困ったおもしろくないおもしろくないといっているしね、ぼくは大人になるのがいやになったの」
「なかなか、いろいろ考えたもんだね。大人になる
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