口をうごしかしている人にかぎるんだ。だからうしろ向きの人のいっていることばは分らない。そんなわけで、ときどき、切れ切れながら、彼のいうことばが分るんだ」
「ふしぎな器械ですね。しかしそれはおもしろいですね。しかしほんとうかしら」
「見れば、ほんとだと分るだろう」
「ああ、そうか。その器械は航時器(タイム・マシン)というあれでしょう」
「あれとは、ちがう。顕微集波器《けんびしゅうはき》と、私は名をつけたがね。つまりこの器械は、一万年前なら一万年前の光景が、光のエネルギーとして、宇宙を遠くとんでいくのだ。そして他の星にあたると、反射してこっちへかえってくる。星はたくさんある。ちょうど一万年かかって今地球へもどってくるものもある。それをつかまえて、これから君に見せてあげよう」

   一万年前の大陸

 おじさんのいうことは、よく分らなかったけれど、おじさんが見せてくれた映画――ではない、「うごく一万年前の光景」は、なかなかおもしろくて、よく分った。それは、大事なところになると、おじさんが説明をしてくれたから、なおさらよく分ったのだ。
 約一万年前の世界が、おじさんの器械の映写幕の中に見えて
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