さい》の秘密はそのなかにあるのだ。彼は勇躍して机に噛りつき、取る手も遅しとその青い本を開いて読みだした。
『アダム[#「アダム」に傍線]ガ八千年目ノ誕生日ヲ迎エタルトキ、天帝ハ彼ノ姿ヲ老婆ノ姿ニ変ゼシメラレキ、ソレト共ニ一ツノ神通力ヲ下シ給エリ、スナワチアダム[#「アダム」に傍線]ノ飼エル多数ノ鼠ヲ、彼ノ欲スルママニ如何ナル物品生物ニモ変ゼシメ得《ウ》ル力ヲ与エ給エリ、但《タダ》シソレニハ一ツノ条件ガアッテ毎朝午前六時ニハ必ズ起キ出デテ呪文ヲ三度唱ウルコト之《コレ》ナリ。モシモソレヲ怠ッタルトキハ、彼ノ神通力ハ瞬時ニ消滅シ、物ミナ旧態《キュウタイ》ニ復《モド》ルベシ、仍《ヨ》リテアダム[#「アダム」に傍線]ハ、飼育セル多数ノ鼠ヲ変ジテ多クノ男女ヲ作リモロモロノ物品ヲ作リナセリ』
 読み終った梅田十八は、非常なる恐怖に襲われた。以前から、どうもこういう気がせぬでもなかったのである。今日世の中に充満する人間のうち、ダーウィンの進化論に従って、猿を先祖とする者もあるかもしれないが、中にはまたこの妖婆アダムウイッチの日記帳にあるごとくそれが鼠からか水母《くらげ》からか知らないが、とにかく他の動
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