。それからペルシャ猫ミミー嬢の力を借りて、木底から八匹の仔鼠を追いだした。
「今日の課税は八ルーブリだ」
ワイトマンは鉛筆をとりあげて机の上の用箋に8ルーブリと書きつけた。心憶《こころおぼ》えのために。
それが済むと、空の籠を卓子《テーブル》の上に逆さにして置いた。彼の手には一|挺《ちょう》の大きな鉞《まさかり》が握られた。彼はその鉞をふり上げると、力一ぱい籠の底板に打ち下ろした。
パックリと底板が明いた。なかは洞になっていた。そこにはもう一匹の仔鼠も残っていなかったけれども、その代りに銀色に輝いた立派な真珠の頸飾が現れた。
「とうとう見つけた。そーれ見ろッ?」
ワイトマンは大得意だった。
彼はもうすこしで老人レッドの身体を調べることを忘れることであったが、不図《ふと》それに気がついて、これまた昨日に劣らぬ厳重な取調べをした。しかしこの方からは一|顆《か》の養殖真珠も出てこなかった。
老人レッドは、命ぜられるままに、十万八ルーブリの税金を支払った。十万ルーブリは真珠の関税、残りの八ルーブリが鼠の超過関税だった。老人は二十八匹の鼠を歪んだ籠の中に入れて税関を出ていった。
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