らかかってレッドの鼠を検べるために拵え上げたものだった。彼はその皮袋の口を開いて、金網の籠の入口にしっかりと被せた。そして入口を開けると、籠の中の鼠をシッシッと追った。籠の中の鼠は愕《おどろ》いて開かれた入口から、ワイトマンの註文どおり皮袋のなかへと飛びこんでいった。
「うむ、これで二十匹、あとは……待て待て」
ワイトマンは腰をかがめて机の大きな引出をあけた。その中から一匹の美しいペルシャ猫ミミーが現れた。ミミーの首っ玉には翠《みどり》色のリボンが結びつけてあった。そして小さな鈴がリンリンと鳴った。この可愛いい小猫は、ワイトマンの隠し女アンナから胡魔化して借りてきたものであった。悪人相手の税関吏は、かくのごとく実に骨の折れる商売だった。隠し女の一人や二人は許してもらわないと、大事な命が続かない。
ワイトマンは小猫のミミーを大きな手で掴んだまま、空になった籠のまわり――特に部厚い木を貼った籠の下半分に近づけた。小猫は苦しがって身もだえした。そのたびに鈴がリンリンといい音をたてて鳴った。
すると愕くべし、俄然鼠の立ち騒ぐ音がしはじめた。どうやら籠底を蔽《おお》っている部厚い木のなから
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