「うむ二十匹か。――一イ二ウ三イ……。なるほど二十匹だよし、無税だ」
レッド老人は、恭々しく礼をいって、税関の小門から出ていった。そしてラチェットのところへ行って、鼠を二十八匹売った。籠の中にいたのは、確かに二十匹だったのに……。
これだけでは、謎を提供しただけである。謎を解いてないこの小説をここで切って出すなら、これは謎の解答を「懸賞」として、一等当選者に金一千円也、以下五等まで賞品多数、応募用紙は必ず本誌挿込みのハガキ使用のことということにすれば「新探偵」の購読者は急に二、三倍がたの増加を示すことになろう。しかし「新探偵」の編集者|大空昇《おおぞらのぼる》氏は編集上手ではあるが、商売上手ではないから、とてもそれほどの賞金を出さないであろう。
「懸賞」にすることを已むを得ず撤回して、右の小説の回答篇を後に接いで置こう――と作者梅野十伍は再びペンを取上げた。
その翌日の昼さがりのことだった。
レッド老人は、また昨日と同じような鼠の籠を持って税関に現れた。
「旦那、すみません。また鼠が二十匹です。どうか勘定して下さい」
「こら、レッド、貴様は怪しからん奴だ。昨夜《ゆうべ》酒場
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