そしてこれを使って、軍船をことごとく撃沈してしまえばいいのだ。これは実に面白いことになったわい」
 と、博士は大恐悦の態で、また釣魚をはじめたのだった。
 糸をすいすいと引いたり降ろしたりしながら、楊《ヤン》博士はいよいよ脳味噌の中から自信ある科学知能をほぐしはじめたのである。
「まず目的というのは、軍船の底に穴をあけてそこから海水の入るにまかせ、沈めてしまえばいいのだ」
 それからさらに一歩進んで、
「軍船とは何ぞや」
 の定義から始まって、
「軍船は、どうして走るか。船底はどのくらい硬いか。スクリューは何でできていて、硬度はどのくらいか」
 などと、記憶をよびもどしたり、結局軍船の攻撃要領を次のように判定した。
 すなわち、一、軍船を沈めるのには、すべからく船底に断面積大なる穴をうがつべし。二、第一項の作業を容易ならしむるため、まずもって軍船のスクリューを破壊しおくを有利とす。
 というわけで、その要領は実に一見平凡なものであった。しかし、インチキでなく本格ものは何事によらず常にもっとも平凡に見ゆるものであった。
 さあ、それからが、大変である。
 ではいかにして、一、軍船の胴中に
前へ 次へ
全17ページ中7ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
海野 十三 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング