撃沈せられんことを。而して右に関し、軍船一艘ごとに金的貨二万元を贈り、なお且つ副賞として、潜水艦には三万元、駆逐艦には一万元、内火艇十元、短挺四元、上陸部隊満載のものは倍増し、軽巡に於ては二十万元、航空母艦に……(ここで博士は大きな欠伸を一つして、途中を読むのをぬかし、その最後の行に目をうつしてみると)茲《ここ》に副官府大監馮兵歩を使として派遣し、楊《ヤン》先生を中国海戦科学研究所大師に任ずるものなり――
博士はその長い辞令を馮兵歩《ひょうへいほ》の前にぽんと放りだして、
「なんだい、これは」
といった。
馮兵歩は、そこで慌てながら、大辞令の意味をいろいろと詳細に説明をして博士に聞かせたが、博士はいっこう合点のゆかぬ面持であった。
馮大監は、博士ともいわれる人の、理解力の貧困さに呆れかえったが、そのうちに、彼は、いずくんぞしらん楊《ヤン》博士が中国がいま大日本帝国と大戦争中であることをぜんぜん知らないらしいことに気がついた。
そこで気がついて、彼は蘆溝橋事件からはじまった中国対東洋鬼国との戦闘経過をのこりなく一部始終を説明したところ、博士ははじめて手をうって、
「なるほど、承
前へ
次へ
全17ページ中5ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
海野 十三 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング