れは変だ」
ウルスキーとワーニャは、互いに顔を見合わせて、怪訝《けげん》な面持《おももち》だった。
しばらくして二人は、云いあわせたようにホッと吐息《といき》をついた。
「さあ、これで儂の『消身法《しょうしんほう》』の実験は終ったのだ。約束どおり、その金環《きんかん》を返して貰《もら》おう」
と、楊博士はウルスキーの手から金環をふんだくった。ウルスキーは呆然《ぼうぜん》としている。
「これだこれだ。この金環だ。ああよくもわが手に帰ってきたものだ。わが生命よりも尊《とうと》いこの世界の宝物《ほうもつ》! どれ、よく中を改めてみよう」
黄金の環が、その宝物かと思ったが、博士はその環の一部をしきりにねじった。すると環が縦に二つにパクリと割れた。博士はソッと片側の金環をとりのけた。中は空洞《くうどう》であった。つまりこの金環は、黄金の管《くだ》を丸く曲げて環にしてあるものだった。
「ややッ。無いぞ無いぞ、大切な宝物がない。オイどうしたのだ。世界一の宝物を早くかえせ」
ウルスキーは気がついて、
「なにを喧《やかま》しいことをいうんだ。黄金《おうごん》の環《かん》はちゃんとお前の手に返っ
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