見えざる敵
海野十三
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【テキスト中に現れる記号について】
《》:ルビ
(例)上海四馬路《シャンハイすまろ》
|:ルビの付いていない漢字とルビの付く漢字の境の記号
(例)怪博士|楊羽《ようう》
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上海四馬路《シャンハイすまろ》の夜霧《よぎり》は濃《こ》い。
黄いろい街灯の下をゴソゴソ匍《は》うように歩いている二人連《ふたりづれ》の人影があった。
「――うむ、首領《かしら》この家《いえ》ですぜ。丁度《ちょうど》七つ目の地下窓《ちかそう》にあたりまさあ」
と、斜《なな》めに深い頬傷《ほおきず》のあるガッチリした男が、首領の袖《そで》をひっぱった。
「よし。じゃ入れ、ぬかるなよワーニャ」
と、首領と呼ばれた眼玉が魚のように大きい男は、懐中からマスクを出して、目にかけた。
合図の数だけ入口を叩くと、重い木製の扉《ドア》が静かに内に開《あ》いた。
前室《ぜんしつ》を通って、次の部屋にとびこむと、ここはガランとした広間だ。
ガランとしたこの室には、中央に大きな古い卓子《テーブル》が一台。そのほかには隅に背の高い衝立《ついたて》が一つあるばかり。
「おお、――」
と声
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