があって、その衝立のうしろから現われた異様《いよう》な人物。長い中国服を着、その上に白い実験衣をフワリと着ている猫背《ねこぜ》の男だった。頭髪《とうはつ》も髭《ひげ》ものびっぱなしで、顔の中から出ているのは色の悪いソーセージのような大きな鼻だけだった。両眼《りょうがん》の所在《ありか》は、煙色《けむりいろ》のレンズの入った眼鏡に遮《さえぎ》られて、よくは見えない。服装や身体つきから見ると、中国人らしいところもあるが、大きな鼻や深い髭から見ると西洋人のようでもある。
「やあ、楊博士《ヤンはかせ》」とワーニャは、相手を楊博士とよび、「こっちが首領ウルスキー氏だ」
楊博士は、よろめくようにして卓子の縁《ふち》をつかんで、グッと顔を前につきだした。
「おお貴様だ。さあ盗んだものを早く返せ」
楊博士は髭をブルブルふるわせて叫んだ。
「うむ、これだろう」
と、ウルスキーは上着の下からピカピカ光る人の顔ほどある黄金《おうごん》の環《かん》を出して、博士の方に見せた。
「あッ、それだッ」
と、博士が蛙《かえる》のようにとびついてゆくのをワーニャが横合《よこあい》からとんできて、博士の身体をつき
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