とばした。
 博士はドンと尻餅《しりもち》をついて、蟾蜍《ひきがえる》のように膨《ふく》れた。
「ど、どっこい、そうはゆかないよ。見かけに似合《にわ》[#ルビ「にわ」はママ]わず、太い先生だ。これが欲しければ、約束どおり、あれを実験して見せろ。よく話をしてあった筈《はず》じゃないか」
 博士は膝頭《ひざがしら》に手をおいて、ヨロヨロと立ちあがったが、
「じゃあ、実験をして見せりゃ、必ず返すというんだナ」
「そうだ。待たせないで早くやらないか」
 博士はシブシブと承知の色を示した。
 彼は腰を折りまげて、卓子《テーブル》の下を覗《のぞ》きこむと、のろのろした立居振舞《たちいふるまい》とはまるでちがった敏捷《びんしょう》な手つきで、一抱《ひとかか》えもあろうという大きな硝子壜《ガラスびん》をとりだして、卓子の上に置いた。その壜は横に大きな口がついて、扁平《へんぺい》な摺《す》り合《あ》わせの蓋《ふた》がついていた。
「さあ、こっちへよって、よく見るがいい」
 博士は手招《てまね》きした。
 首領《しゅりょう》ウルスキーは、それッとワーニャに目くばせをして、今のうちに、奥まった隅にある衝立の
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