鬼青鬼が引導を渡して、貴人がこれから極楽往生を遂げるというところ。人形のそばへよってごらんなさい。よく見ていると、息が聞えるようだ。はははは」
案内役らしい背のひょろ高い男が、一行を振りかえって大笑《たいしょう》した。
三千子は、この第二号室の人形の意味が分って、なるほどと肯《うなず》いた。
恐《おそろ》しき椿事《ちんじ》
三千子は、それとなく、この一行の後について、各室を巡《めぐ》っていった。案内役の中国人は、一室毎に高まる怪奇な鬼仏の群像にてきぱきと説明をつけるのであった。
三千子は、その説明を聞きたさのあまり、ついて歩いているのであったが、鬼仏の群像には、二通りあって、一つは鬼が神妙らしい顔つきをして僧侶になっているもの、それからもう一つは、顔は阿弥陀《あみだ》さまを始め、気高い仏でありながら、剣や弓矢などの武器を手にして、ふりまわしている殺伐《さつばつ》なものと、だいたいこの二つに分けられるのであった。
「仏も、遂には人間の悪を許しかねて、こうして剣をふるわれるのじゃ。はははは」
かの案内人は、説明のあとで、からからと笑う。
あたり憚《はば》からぬその
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