折れたのか、一同にはわけが分らなかった。何にもしないのに、折れるというのはおかしいのだ。しかし棒はたしかに、真二つに折れた。
 帆村は跼《かが》んだまま、後に振り返った。
「見えましたね。この太い棒が、鋭い刃物で斬られると同じように、切断されたのです。棒の切口の高さを目測《もくそく》してください。もしも僕が、こうして跼まないで、直立したまま真直こっちへ歩いて来たとしたら、この棒の代りに、僕の細首《ほそくび》が、見事に切断されてしまった筈です。どうです、お分りですかな」
 委員たちは、首を左右に振った。帆村の首が切断されたらということは分るが、なぜ、そうなるのか分らなかった。
「棒を切ったのは、鋭い刃物です。その刃物は、皆さんの目には見えないと思うでしょう。ところが、ちゃんと見えているのですよ。この水牛仏が手にしている大きな青竜刀《せいりゅうとう》――これが、今この棒を叩き斬ったのです」
「おい君。そんな出鱈目《でたらめ》をいっても、誰も信用しないよ」
 長老陳程が、憎《にく》まれ口《ぐち》をきいた。
「出鱈目だというのか。じゃ、君は、立ったまま、ここまで来られるか」
「行けないで、どう
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