するものか」
「えっ、ほんとうか。危い、よせ!」
帆村が叫んだときは、もう遅かった。
長老は、つかつかと帆村の方へ駈けだした。
「ああッ」
次の瞬間、長老陳程の首は、胴を放れていた。そして鈍い音をたてて、床の上に転った。
「あ、危い。誰も近よってはいけない。われわれの目には見えないが、この水牛仏は、青竜刀を手にもったまま、独楽《こま》のように廻転しているのだ。生命が惜しければ、誰も近よってはいけない」
帆村は、そういうと、跼んで、一同のところへ引返してきた。
一同は、急に不安に襲われ、帆村より先に、前室へ逃げだそうとしたが、そこを動けば、また自分の首が飛ぶのじゃないかという恐れから、どうしていいか分らず、結局その場にへたへたと坐りこんでしまった。
ふしぎな残像《ざんぞう》
「風間さん。あれは、人間の眼が、いかに残像《ざんぞう》にごま化されているかという証明になるのですよ」
事件のあとで、帆村は風間三千子の質問に応《こた》えて、重い口を開いた。
「残像にごま化されているといいますと……」
「つまり、こうですよ。今、目の前に、回転椅子を持ってきます。僕がこれを、一
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