の刃は水平に寝ているのが気になった。
(なるほど。すると、この人形が、このまま一まわりぐるっと廻転したとすると、あの青竜刀はここに立っている人間の首をさっと斬り落せるわけだ。してみると……)
 帆村は、長老の傍へいって、
「長老、あの水牛仏は動きだしませんかね。いや、ぐるぐると廻転しませんかね」
 長老は、それを聞くと、かっと眼を剥《む》いたが、次の瞬間には、口辺《こうへん》に笑《え》みを浮べ、
「とんでもない。人形が動いたり廻ったりしてはたいへんだ。傍へいって、よく調べたがいいじゃろう」
「調べてもいいですか。あなたは、困りゃしませんか」
「あの人形が動いているのを見た人があったら、わしは水牛の背に積めるだけの銀貨を呈上《ていじょう》する」
「本当ですな、それは……」
「くどい男じゃ、早く調べてみたがよかろう」
 帆村は頷《うなず》いて、後をふりかえると、水牛仏に、じっと目を注《そそ》いだ。
 そのとき、室内が、俄《にわか》に明るくなった。天井の水銀灯が、煌々《こうこう》と点火したのであった。
「誰だ、照明をかえたのは……」
「照明は、自然にかわるような仕掛になっているのじゃ」
 長
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