った。
「ははあ、お前がキンチャコフか。だいぶん俺よりも年上らしいが……」
「火の玉」少尉は、どこまでも相手を呑んでかかった。
呉越同舟《ごえつどうしゅう》
それから、この奇妙な日ソ組合せによる空中漂流がつづいた。
マイクロフォンの修理はできたけれど、これをつけても送信器は働かなかった。マイク以外に、故障ができたものらしく、専門家でない六条には、すぐさまその故障箇所を見つけることができなかった。
だから無電器械は、受信器だけが役に立った。
「ハア、××繋留気球第一号!」
といつまでもこっちを呼んでいるのが聞えたが、その声は、だんだんと強さを減少していく。それはいよいよ××陣地から遠く距《へだた》ったことを意味するのであった。
無電は、しきりに救援の飛行隊が出動したことを報じていた。
たしかに、それに違いなかった。午前二時ちかくだったであろうか、赤青の標識《ひょうしき》をつけたすこぶる快速の偵察機らしいのが一機、漂流《ひょうりゅう》気球に近づいた。
「おいキンチャコフ。俺も振るから、貴様もこの懐中電灯をもって、こういう具合に振れ。いいか」
六条は、キンチャコフ
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