として、一応無電器械の知識もあったから、どっちが受信器のパネルで、またどっちが送信器のパネルか、見分けがついた。彼はいそいで受話器を頭にかけるとスイッチを入れた。真空管が、ぱっと明るくついた。
 しばらくすると、受話器の奥から、声がとびだした。
「ハア、××繋留気球第一号。こっちは××陣地です。ハア、××繋留第一号。こっちの声が聞えますか。只今○○飛行隊と連絡をとり、飛行機隊が追跡してくれることになりましたから、安心して下さい。ハア、××繋留気球第一号! こっちの声が聞えましたら、そっちから電波を出して下さい」
 ××陣地の通信員の声だ。
 それを聞くと、六条は勇気百倍の思いがした。地上でも、この気球が繋留をはずれて空中に漂流しだしたことをちゃんと気づいているのだ。そして飛行隊が急遽出動して、この気球の救援に赴《おもむ》くことになったそうだ。このうえは、こっちの所在を地上なり救援の飛行機に知らせることさえ忘れなければいいのだ。それは無電器械の送信器を働かせてマイクへこっちの声をふきこめばいいのである。
 六条は、左手をのばして、無電器械の送信器にスイッチを入れた。パイロット・ランプが明
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