ーっと見まわした。すると、ときどき蛍《ほたる》の火のように、懐中電灯がいくつもちらちら点滅するのが見られた。捜索隊にちがいない。
「ふん、やっぱり本当なんだな。怪しい奴がしのびこんだというのは……」
だが、きびしい軍律の中で生活してきた「火の玉」少尉にとっては、たとえ傍に何事があろうと、気球が予定の時刻に上昇しないことについて甚《はなは》だ不満であった。
「しようがないなあ。降りていって、一つうんと文句をいってやろうか」
と思っていると、ゴンドラが急にごとんと大きく揺《ゆ》れて、地上から二三メートル上に飛びあがった。それは地上に置いてある信号灯が俄《にわ》かに遠くなったことからも知られた。
「おや、どうしたのかな」
そういっているうちに、ゴンドラはまた一つごとんと揺れて、また二三メートル上に飛びあがった。
「はてな、――」
そのとき少尉は、地上の信号灯の前に一つの人影が大童《おおわらわ》になって綱を解こうとしているのを認めた。
「おお、やっと気球係の地上員がやって来たんだな。いくらなんでも、たった一人では、ちと無理だ」
そういっているとき、ゴンドラはまた大きくごとんと揺れ、と
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