たし、六時頃その行手にあらわれる十五夜の月の影響が、一体どうであろうかを考えたのである。
 夕方になった。私達は、宇宙艇の行方をじっと見つめていた。天文台の内外は、少しずつ騒がしくなって来た。警官隊や、附近の青年団などがやって来て、私の部下と懸命に争っているのであろう。この調子では、根賀地か私かが、彼等に当らねば、もちきれないかも知れないと思った。
「先生、宇宙艇の進路がかわって来ます」
 私は大急ぎで望遠鏡をのぞいた。なる程、少し左へ傾きかけた。
「月の軌道より外へ出ているのか」
「そうです。正に一万キロメートル外方《がいほう》です」
 外の騒ぎは少しずつはげしくなった。月はだいぶん高く上って来た。私は真弓子と川股とを隣室から連れて来させた。二人は心配そうな表情を浮べていたが、大変|温和《おとな》しくなっていた。
 私は彼等に呼びかけた。
「お聞きなさい」
 と私は何やら感激に胸をふるわせた。
「お聞きなさい。これからお聞かせしたり御見せしたりするものは、貴方がたにかなり勇気を要求いたします。先ず第一に、真弓さん、貴女の本当のお父さまは、無着陸世界一周飛行を敢行した操縦士風間真人氏な
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