。いままで秘密も秘密、大秘密にしてあった宇宙艇の建造のことですからね。重役は青くなって今も協議中ですが、会社の建造方針や、相良技師長苦心の設計事情について、直ちにステートメント発表の文案を起草中だそうです」
「そうか。実は昨夜《ゆうべ》も会社へしのび込んだのだが、あの中までは到頭《とうとう》入れなかったのだ。宇宙艇とまでは気がつかなかった」
「相良氏はどこへ行くつもりなのでしょう。会社では火星航路を開くためだったと言っていますが」
「そいつは今少したってみないと一寸わからない。――根賀地。今日は決っしてピストルを手離しちゃならぬぞ」
二人は、未だ何事も起らぬように静かな天文台へ、こっそり忍びいることが出来た。同時に事務所の矢口を呼びだして、部下の総動員を命じた。もう十五分もすれば、この天文台は私の部下によって完全に占領されるであろう。
根賀地は早速、世界唯一の天文望遠鏡に、蜥蜴《とかげ》の如くへばりついて調整に努力した。
間もなく、国道と空とから私の部下は天文台さして集って来た。其の中には真弓子と川股助手とを護送《ごそう》して来た矢口も交《まじ》っていた。天文台は苦もなく占領さ
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