等の搭乗機は直《ただ》ちに急角度で上昇を始めた。既に天空には夥《おびただ》しき飛行機が入り乱れて飛んでいた。どれもこれも言い合わせたように、東へ向って舵《かじ》をとっていた。太陽は中天に赫々《かくかく》と輝いていた。
「天文台へ!」
 わが搭乗機だけが機首を[#「機首を」は底本では「機種を」]西南に向けて飛翔《ひしょう》する。プロペラはものすさまじい悲鳴をあげていた。すれちがう毎に他の飛行機からは、赤旗をうちふってわれ等の快速力を咎《とが》めるのであった。
「先生、東に何が見えましたか?」
「いや見えない。宇宙艇が越中島を飛び出したのは何時何分だった?」
「張り込んでいた中井の電話では十一時三十三分だそうです」
「もう十八分経っている。――相良が宇宙艇にのりこんだのは本当だろうね」
「宇宙艇係の特別職工が言明したのだから間違いじゃないでしょう。相良一人が乗りこんで試験をしていたのが、どうした拍子にか空へ飛び出したというのです。職工は言っています。相良さんが乗りこんでいる内、機械が故障になって飛び出したのだと」
「そりゃどちらでもよい。会社はさわいでいるか」
「そりゃ大変なものだそうです
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